夏の終わりから秋にかけて頻繁に発生する台風は、日本でよく見られる現象ですが、その具体的な定義や特徴を詳しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
ここでは気象庁が定める台風の基準、大きさや強さの基準、そして台風がどのようにして消滅するのかについて解説します。
台風とは何か?
台風とは、どのような条件で気象用語として使用されるのでしょうか?台風とハリケーン、サイクロンとの違いも解説します。
気象庁が定義する台風
台風の定義について気象庁が定める基準は以下の通りです。
- 発生地域:北西太平洋や南シナ海など、赤道より北で東経180度より西の地域で発生した熱帯低気圧のこと
- 最大風速:中心部の最大風速が10分間平均で約17メートル/秒(34ノット、風力8)以上のもの
これらの条件を満たした熱帯低気圧が「台風」と呼ばれます。
気象庁が定義する台風は、地理的な位置と風の速度によって特定されます。
北西太平洋または南シナ海で、赤道よりも北で東経180度より西に位置する熱帯低気圧が対象です。
さらに、この低気圧が10分間の平均最大風速が約17メートル/秒以上であることが必要です。
これらの条件を満たす熱帯低気圧が台風と呼ばれます。
台風は主に熱帯地帯で形成されます。
この地域の海水温度が高いと、上昇気流が活発になります。
その結果、多くの積乱雲が渦を巻きながら形成され、中心部の気圧が低下して熱帯低気圧が発生します。
そして、海からの水蒸気を燃料としてエネルギーを得て台風に発展するのです。
ハリケーンとサイクロンの違い
台風、ハリケーン、サイクロンはすべて、熱帯低気圧が強まった状態を示します。
台風、ハリケーン、サイクロンの違いについての要点は以下の通りです。
- ハリケーン
– 発生地域:北東大西洋、北大西洋、メキシコ湾、カリブ海(西経180度より東)
– 最大風速:約33メートル/秒以上 - サイクロン
– 発生地域:北インド洋、特にアラビア海やベンガル湾
– 最大風速:約17メートル/秒(台風と同等)
気象学的には類似した現象ですが、主な違いは「発生地域」と「風速」にあります。
ハリケーンは主に北東大西洋、北大西洋、メキシコ湾、カリブ海の西経180度より東で発生し、その最大風速は通常約33メートル/秒以上とされています。
一方、サイクロンは北インド洋、特にアラビア海やベンガル湾で見られ、その最大風速は約17メートル/秒です。これは台風と同じレベルです。
また、サイクロンは場合によっては温帯低気圧をも含むことがあります。
台風の大きさと強度、単位(ヘクトパスカル)に関する定義
台風の勢力を示す大きさや強さはどのように分類されているのでしょうか。
それぞれの基準について解説し、台風情報の詳細な理解を深めます。
台風の大きさ「大型」と「超大型」について
台風の大きさには、「大型」と「超大型」という二つのカテゴリーがあります。
- 大型:強風域が半径500kmから800km未満
- 超大型:強風域が半径800km以上
強風域とは、風速が15m/s以上の風が吹く範囲のことを指します。
「超大型」の台風は、日本のほぼ全域を覆うほどの広範囲にわたることがあります。
また、風速25m/s以上のエリアは「暴風域」として区別され、これらの情報は天気予報で示されることが多いです。
台風の強さの3段階分類
台風の強さは、その大きさとともに最大風速によっても評価されます。
最大風速に基づく強さは、10分間の平均風速を用いて3つのレベルに区分されます。
- 33m/s以上44m/s未満:「強い」
- 44m/s以上54m/s未満:「非常に強い」
- 54m/s以上:「猛烈な」
気象情報では、台風のサイズと強さを合わせて勢力を伝えます。
「大型で強い台風」や「超大型で非常に強い台風」などと表現されます。
また、直径が500km未満の場合や最大風速が33m/s未満の場合は、単に「非常に強い台風」や「大型台風」と呼ばれることが一般的です。
気圧と台風の強さ:ヘクトパスカルの意味
台風の強さは、大きさと最大風速で評価されますが、風の強さ(風速)は中心気圧も関わっています。
そのため、台風情報などでは中心気圧を伝えることが一般的です。
中心気圧を測定する単位として「ヘクトパスカル(hPa)」が用いられます。
「ヘクト(h)」が100倍を意味し、「パスカル」が圧力の単位です。圧力の法則を確立したフランスの科学者パスカルの名前から名付けられました。
ヘクトパスカルで低い数値は、より強力な低気圧を示し、それにより強風が発生する可能性が高まります。
記録によると、1951年以降で日本に上陸する直前の台風の中で最も低かった中心気圧は925ヘクトパスカルです。
※1ヘクトパスカルは100パスカル
※日本では1992年12月1日から「ヘクトパスカル」が使われています。それ以前は「ミリバール」という単位が使われていました。
台風が解消される過程
台風が力を失って消滅する現象は一般的であり、天気予報でよく「台風が弱まった」という表現を耳にすることでしょう。
ここでは、台風が消滅するとはどういうことか、その過程を詳しく説明します。
最大風速が17m/s以下に低下した場合
風は暖かい海面からの水蒸気をエネルギー源にして強まります。
しかし、台風が移動する過程で海や地面との摩擦によってエネルギーを失い続けます。
さらに、北へ進むにつれて海水の温度が低くなり、必要なエネルギーが供給されずに徐々に弱まります。
そして、最大風速が約17m/s以下になると、台風とは見なされず、通常の熱帯低気圧と認識されます。
風が弱まったとしても、引き続き激しい雨が降ることがあり、台風特有の天気が続くことも少なくありません。
温帯低気圧への変化
台風が日本に近づくと、冷たい空気が流れ込み台風の力を弱めることがあります。
この時、冷たい空気と暖かい空気が接触して前線が形成され、台風は「温帯低気圧」へと変わります。
この変化により、最初に風速は減少するものの、北からの寒冷な空気が影響して再び強風が発生することもあります。
温帯低気圧は、特にその影響範囲が広がりやすく、広範囲にわたって悪天候を引き起こします。
台風から温帯低気圧へと変わる際には、低気圧の中心よりも外側での強風や大雨に注意が必要です。
熱帯低気圧と温帯低気圧の主な違い
熱帯低気圧と温帯低気圧の一番の違いは、「前線の存在」です。
熱帯低気圧は暖かい空気のみで形成され、主に熱帯地帯で発生します。
対照的に、温帯低気圧は冷たい空気と暖かい空気が衝突して生じ、寒冷前線や温暖前線が形成されます。
さらに、熱帯低気圧が最大風速17m/sを超えると台風と称されるのに対し、温帯低気圧は同じ風速でも台風とは呼ばれません。
台風の日本上陸についての定義
台風が日本に上陸する際の基準について説明します。
また、台風がどのようにして「上陸」と認定されるのか、そして「通過」との違いについても詳しく解説します。
台風の中心の位置による上陸の判定
気象庁の基準によると、台風の中心が北海道、本州、四国、九州のどれかの沿岸に到着した場合に「台風の上陸」と認定されます。
特に強い台風や超大型の台風の場合、その影響は上陸しなくても広範囲に及びます。
しかし、上陸という言葉は、中心が沿岸に到達した時に限られます。
中心が300km以内に接近した場合は「接近」と表現されます。
また、1951年から2019年までの期間において、台風が最も頻繁に上陸した地域は鹿児島県で、41回の記録があります。
これに続くのは高知県の26回、和歌山県の24回です。
「上陸」と「通過」の区別
沖縄諸島やその他の離島では、台風が直接通過しても「上陸」とは言わず「通過」が使われます。
これは、「上陸」の定義が北海道、本州、四国、九州に限定されているためです。
沖縄を「通過」した台風が、その後、九州に「上陸」する場合もあります。
沖縄では台風が頻繁に影響を及ぼすにもかかわらず、「上陸」したとはカウントされないため、上陸数はゼロとなります。
ちなみに、台風の「接近」は沖縄、北海道、本州、四国、九州すべてに使われます。