年末に欠かせない風物詩であるお歳暮は、日頃の感謝を伝えるとともに、来年も引き続き良い関係を願う意味を込めて贈られます。
お歳暮を送る際には様々なマナーが存在し、それを知らずにいると、かえって相手を不快にさせてしまうこともあり得ます。
今回は、お歳暮を送る時や受け取る時、喪中である場合やお歳暮のやりとりを辞めたい時の適切なマナーについて解説します。
正しいマナーを守り、感謝の気持ちを相手にしっかりと伝えましょう。
伝統的には手渡しでのお歳暮
お歳暮を送る方法として、現在では宅配サービスを利用することが一般的ですが、昔からの伝統では、風呂敷に包んで直接手渡しするのが礼儀とされています。
直接訪問してお歳暮を渡す場合は、相手の都合を考慮し、食事時間や早朝、深夜など相手にとって不便な時間帯を避けることが大切です。
ただし、相手が遠方にいる場合やスケジュールが合わない時は、宅配便を利用することもふさわしい方法です。
宅配便で送る際には、礼状を別に郵送するか、贈り物と一緒に添えることが推奨されます。
このとき、礼状が商品と同時に、またはそれより先に届くよう配慮しましょう。
さらに、宅配便で送る際には、商品が破損しないように注意深く梱包することも重要です。のし紙を使用し、その上から丁寧に包装紙で包むことが求められます。
お歳暮を贈る際のエチケット
お歳暮には、手渡しでも郵送でも守るべきエチケットがあります。
ここでは、お歳暮を送る際に気をつけたい基本的なマナーを説明します。
お歳暮を贈る適切な時期
お歳暮を送る時期は地域によって異なる場合がありますが、関東では12月初旬から20日前後、関西では12月10日から20日までが一般的です。
年末には年始の準備や帰省で忙しくなるため、20日前後に送ると良いでしょう。
生鮮食品を送る場合は、新年の食材として使用されることが多いため、年末に近い時期に贈るのが適切です。
お歳暮を贈る相手
お歳暮は、相手への感謝と来年の継続的な関係を願う意味が込められています。
贈る相手に厳密なルールはありませんが、通常は上司、教師、両親や親戚など、普段からお世話になっている人々や、今後も関係を続けていきたい人々に贈ることが一般的です。
新婚の場合は、仲人や媒酌人に対しては結婚後最低3年間はお歳暮を贈るのがエチケットとされています。
ただし、公立学校の教師や政治家など、法的に贈り物を受け取ることが制限されている職業の人もいるので、贈る前には相手の立場を考慮し確認が必要です。
また、最近では企業間での贈答品禁止が増えているため、事前の確認が望まれます。
お歳暮に使うのし紙
正式な贈り物であるお歳暮では、水引が施されたのし紙を使用します。
のし紙の右上に熨斗を添えるのが一般的ですが、生鮮食品の場合は熨斗を省略することもあります。
お歳暮として贈る際の表書きは「御歳暮」とします。時期が過ぎた場合は、新年から松の内までを「御年賀」、松の内を過ぎたら「寒中御見舞」と表書きを変更します。
特に寒中御見舞を贈る際には、目上の方に「寒中御伺」と表書きすることで、より礼儀正しい印象を与えます。
お歳暮を選ぶ際の配慮と礼儀
お歳暮を選ぶ際には、贈る品物にも礼儀と配慮が必要です。
このセクションでは、適切な価格帯や選び方のポイントを詳しく説明します。
贈る品物の適切な価格
お歳暮の価格は、贈る相手との関係性の深さによって異なります。
知人や友人にはおよそ3,000円、上司や仲人、実家の親などには5,000円程度が一般的な目安です。
お中元を贈っていない場合や、年配の方が贈る際には、5,000円から10,000円程度の品物を選ぶことが多いですが、相手に負担を感じさせないためにも、あまり高価な品物は避けるのが賢明です。
お歳暮は毎年の恒例であるため、双方にとって負担にならない価格帯を選ぶことが重要です。
相手に合った品物の選び方
お歳暮を選ぶ際は、予算内で相手の好みや家族構成を考慮した商品を選ぶことが大切です。
カタログギフト、ハム、ソーセージ、長持ちする食品、酒類、お正月用の生鮮食品などが一般的な選択肢ですが、相手のライフスタイルに合わせて慎重に選ぶことが求められます。
商品券も人気がありますが、特に目上の方へは不適切とされることがあるため、親しい関係の人に限定して贈るのがおすすめです。
お中元とお歳暮の品物の選び方の違い
年の終わりに贈るお歳暮は、お中元よりも形式を重んじる傾向があります。
お中元を贈った相手には、続いてお歳暮も送るのが一般的です。
また、お歳暮はお中元よりも少し高価な品物を選ぶことが多く、お中元の価格より約20%高い品物を選ぶのが適切とされています。
お歳暮を受け取った際のマナー
お歳暮は、贈る際のエチケットだけでなく、受け取った後の対応も大切です。
ここでは、お歳暮を受け取った後の適切な礼儀やお礼の表し方について詳しく説明します。
お歳暮を受け取った後の対応
お歳暮は贈り手の感謝の気持ちを表しているため、基本的には特別な返礼を要求されるものではありません。
しかし、贈り主への感謝を示すためには、受け取ったお歳暮の半額程度から同額の品物を「御礼」として、または寒中見舞いの期間に「寒中御見舞」として送るのが適切な方法です。
お礼の書状を送る
お歳暮を受け取ったら、速やかにお礼を伝えることが礼儀とされています。
現在では、電話やデジタルメッセージでのお礼も一般的ですが、電話でのやりとりの後に書面でのお礼状を送ることが、伝統的なマナーに則っています。
お礼状は、お歳暮を受け取ってから3日以内に送るのが理想的です。
特に年配の方や目上の方に対しては、お礼状の文体や形式に気を配ることが重要です。
形式を整えることで、敬意を示し、感謝の気持ちを深く伝えることができます。
お歳暮における特別な事情のマナー
お歳暮を送る際や受け取る際に加えて、特殊な状況でのマナーも把握しておくことが重要です。
ここでは、特別なシチュエーションごとの注意点について詳しく解説します。
喪中の場合の対応
お歳暮は時候の挨拶の一環ですが、相手または自分自身が喪中の場合には特別な配慮が必要になります。
特に四十九日が経過していない場合は、贈り物を控えるべきですし、四十九日が経過してからの贈り物でも、装飾を抑えた無地の短冊や奉書紙を使用することが望ましいです。
さらに、喪中であることを理由にお歳暮を控える際は、お正月の祝いごとが不適切となるため、寒中見舞いを送るなどの配慮を行います。
また、相手が喪中で敏感な場合には、贈り物の表書きを「粗品」などとして控えめにすることも配慮の一つです。
お歳暮を辞退する場合
様々な理由でお歳暮を辞退したい場合、礼儀正しい対応が求められます。
贈り物を受け取った後は、感謝の気持ちを込めたお礼状を送り、相応の品物を返すことが一般的です。
特に公務員のように職業上贈り物を受け取ることがふさわしくない場合は、未開封の品物を返送し、その理由を説明する手紙を添えることが適切です。
お歳暮をやめる方法
付き合いが疎遠になったり、経済的理由でお歳暮をやめたい場合もあります。
しかし、突然贈り物を止めることは失礼にあたるため、まずはお中元をやめることから始め、お歳暮の金額を徐々に減らし、最終的には挨拶状のみを送るなど段階的に関係を調整することがスムーズです。
感謝を形にするお歳暮:エチケットを遵守して
お歳暮は、さまざまなマナーが伴う大切な文化です。
これらのマナーを怠ると、せっかく心を込めて選んだ贈り物が相手に不快な思いをさせてしまうことがあります。
贈る側も受け取る側も、日常の感謝を相手に適切に伝えるために、適切なエチケットを心掛けましょう。